nokoto.が読んだ本の備忘録です。
こんにちは、管理人のnokoto.です。
このページは、私nokoto.が日々のんびり読んで、楽しんでいる読書本の備忘録となります。
2024年 読書の秋🍁 読んで良かった!伊坂幸太郎作品
大好きな伊坂幸太郎先生の作品です。この夏、’夏休みフェア’と題して書店で平置きされていた伊坂先生の名作たちを手に取りました。夏に手に取り、すっかり秋になってしまいましたが、堪能しました!
「グラスホッパー」、「マリアビートル」、「AX」を含めた「殺し屋シリーズ」と呼ぶべき三作品。それぞれに個性的な殺し屋が登場するお話です。登場人物の一部が再登場していて、つながりを感じてワクワク感が増します。それぞれの独立したストーリーになっていて、どの一冊から読み始めても楽しめます!
グラスホッパー / 著者:伊坂幸太郎 (いさか・こうたろう) / 出版社:角川文庫
出版社からの作品紹介
「復讐が横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに――「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説! (角川文庫「グラスホッパー」裏表紙より)
主な登場人物
主な登場人物は、
・妻を交通事故で亡くした元教師の「鈴木」
・自殺をさせて殺すという手法の殺し屋「鯨」
・ナイフ使いの若い殺し屋「蝉」
・押し屋と呼ばれる殺し屋と思わしき人物で「槿(あさがお)」と名乗る男
物語は、鈴木、鯨、蝉の視点で入れ替わりながら進んでいきます。
nokoto’sコメント
感想
復讐者、殺し屋、非合法な仕事の業界が次々関わって展開していき、物語全般に、どこかしら重たい空気がまとわりついてくるような印象でした。
終盤は物語に散りばめられていた伏線回収とも言うべき展開となっていきますが、ラストシーンまで読み終わると、あれ、これはもしかして?と、また気付かされ、もう一度読み返そうとページをめくることになりました。
物語は思ったより複雑で巧妙に仕組まれていて、私には少し難しかったので、再読した時の気づきが多い作品でした。
お気に入りポイント
鈴木の復讐相手である事故を起こした男は、寺原という名ですが、物語の中ではバカ息子、寺原の息子、寺原長男などと呼ばれています。バカ息子の父親が”寺原”と呼ばれ〈フロイライン〉(令嬢という意味)という名の怪しい会社の社長です。この呼び名のあり方が、私としては印象に残りました。
もう少し細かい感想
亡き妻を思い、心の中で頑張っている自分のことを妻に報告し、妻が言っくれるであろう言葉を聞いて励まされる鈴木。鯨は今まで自殺させてきた相手たちの亡霊を見て、会話さえ交わしてしまいます。ナイフ使いの蝉は、映画で見た、かわいそうな少年と自分を重ね合わせ、自由になりたいと焦燥にかられます。物語の軸になるこの三者の精神の危うさが感じ取られ、この物語の中で薄い霧のように充満しているような感じです。
小説のタイトル「グラスホッパー」はバッタのことです。物語の中では度々、昆虫にまつわるエピソードが語られるのも印象に残ります。
物語の冒頭、鈴木は夜でも明るく、騒がしい街を眺めながら、昆虫のこと考えている場面から始まります。大学時代に聞いた教授の話を思い出しています。
「これだけ個体と個体が接近して、生活する動物は珍しいね。人間というのは哺乳類じゃなくて、むしろ昆虫に近いんだよ」とその教授は誇らしげに言い切った。「蟻とか、バッタとかに近いんだ」
〜角川文庫「グラスホッパー」より引用〜
また、他の場面では、鈴木にどんな仕事をしているのかと聞かれた槿は、群集相で生まれる、黒くて、翅が長く、凶暴なトノサマバッタの話をします。
「俺は、バッタだけの話ではないと思う」
「何がです?」
「どんな動物でも密集して暮らしていけば、種類が変わっていく。黒くなり、慌ただしくなり、凶暴になる。気がつけば飛びバッタ、だ」
「凶暴な飛びバッタですか」
「群集相は大移動して、あちこちのものを食い散らかす。仲間の死骸だって食う。同じトノサマバッタでも緑のやつと大違いだ。人間もそうだ。」
「人間?」急に、自分の名前が呼ばれたかの気分だ。
「人もごちゃごちゃしたところで、暮らしていたら、おかしくなる。人間は密集して暮らしている。通勤ラッシュや行楽地の渋滞なんて、感動ものだ」
〜角川文庫「グラスホッパー」より引用〜
人や人間社会を昆虫の生態と重ねるように語られ、生き物として人も昆虫も変わらないのかもとも思いましたし、不吉な印象が強くなり、妙な怖さを感じました。
話は展開していき、散りばめられていた伏線が回収されていく終盤、やっぱりそうだったか!と合点する人も多いと思いますが、ラストシーンを読んだ後には、きっともう一度ページをめくることになるのではないでしょうか。
私が読み終わった後には、バカジャナイノーってなんだっけ?とか、この列車長くないかって、これってなんだっけ?とか、それで、鈴木の妻が事故で亡くなったのってどれぐらい前の話だったんだろう?と、次々”?”の嵐で、もちろん再読したわけです。私としては重い印象が強い話でしたが、まんまとやられたって感じで、おもしろかったという感想になりました。
まとめ
殺し屋シリーズの第一作目となる小説です。復讐者と殺し屋たちが暗躍する世界の孤独で危うい精神の片鱗が描かれた作品かと思います。
繰り広げられる展開は伊坂幸太郎先生ワールドを楽しめる一冊となっていると感じました。
ラストシーンを読んだ後は、きっともう一度読み返したくなると思います!次の読書の一冊をお探しでしたら、ぜひ一読してみて下さい。
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